「伸子」と書いて、シンシと読む。ノブコさんではありません。
きょうはこの伸子という名の可憐な道具が、藍染め作業においていかに活躍するかについてのお話です。
紺屋さんの土間に埋まっている藍甕は、口径が60センチ、深さも1メートル程度の大きさ。野口紺屋では、この甕で長さ13メートルの反物を染めている。
絞り染めなら糸で括った分だけ布全体が縮むため、かなり大きな布でも藍甕にじゅうぶん入るが、型染めはそうはいかない。長さ13メートルの反物をじゃばら状に折りたたんで口径60センチの甕に入れるのだ。
たたむといっても、両面に糊で繊細な文様が置かれているわけで、布と布の表面が接触すれば文様は崩れてしまう。しかも液体の中に入れるのだから糊はますます剥がれやすくなる。布面同士が接触しないよう、適当な空間を保ってじゃばらにしてゆかなければならない。布面同士がくっつかない、この絶妙な空間を保ちながら布をたたむのが「伸子」の役目なのです。