Kawauso's blog

新製品 宮澤賢治「過去情炎」扇子

 「過去情炎」は、宮澤賢治が生前唯一出版した詩集『春と修羅』に収められた詩で、1923年秋、関東大震災が起きた直後に書かれた詩群のひとつです。賢治は自分の詩を心象スケッチと呼びました。関東大震災の起こる直前の心象スケッチ「オホーツク挽歌」詩群には、若くして病死した妹トシという、たった一人の人間への哀惜がつづられますが、震災後の「過去情炎」を含む詩群では、人間という存在そのもののはかなさ、あやうさが前に出ています。(藍型染扇子 5,000円 税込) 続きを読む

 

羽生田有紀 ∈ かわうそ兄弟商會「インジゴ・ブルーの冒険」

無事終了しました。多数のご来場、お買い上げありがとうございました。

版画家であり藍染め作家でもある羽生田有紀とかわうそ兄弟商會がジョイントした展覧会「インジゴ・ブルーの冒険」が、2011/6/28(火)~7/10(日)に三鷹台のオガワカフェで開催されます。詳細は「続きを読む」から。

感触のぜいたく、あるいは愛すべきモノ

 長く木版画を中心に制作活動をしてきたのだが、数年前、自由に藍染をさせてくれるという紺屋さんの存在を知り、古いシャツを染めに行ってたちまち藍染の虜になった。野口藍染工場は工場という名前ではあるけれど、江戸時代から続く紺屋で、今は六代目親方の野口汎さんと修行中の息子さんが二人だけで、「長板中形」という型染めの浴衣地を染めている。

 木版を彫ってきた経験からごく自然に、染めの型紙を彫ってみたいという衝動にかられた。さっそく渋紙という型紙を染色材料店に買いに行き、デザインナイフで彫ってみる。

 白い布に型を置き、糊をペーストし、藍甕で染める。糊を水で洗う。透明な水の中でゆらゆらと揺れながら浮かび上がってきた白地の文様とそれをふちどる藍の輪郭の生むニュアンスは、うまく言えないけれど、「ああこれだ」と、じぶんがずっと探してきたものに近づいたような、宝物を見つけたような感覚をわたしにもたらした。

 それからは、ただ夢中で楽しくて型を彫っては染めていた。薬品が苦手なので、和紙と柿渋で作られた渋紙も、もち米や米ぬかから作る糊も、藍甕に浸すだけで染まる藍という染料も、性に合っているのか、のびのびと作業できる。版木を彫る時間より渋紙を彫る時間のほうが増えて行った。

新作試作 / iPad 2をくるんでみました

かわうそ兄弟商會「藍Pad」シリーズの試作報告です。
藍染の木綿布でくるりと、iPad 2をやさしくすばやく包みます。
藍染布と裏布のあいだにはキルト芯をはさみました。詳細は「続きを読む」から。

オブジェクト指向の思想と方法論

かわうそ兄弟商會ともゆかりが深く、ソフトウェアエンジニアでもある羽生田栄一さんが、雑誌「TURING MACHINE」(スペック) 1991年2月号から10月号にかけて連載した「オブジェクト指向の思想と方法論」(全5回)を電子版(PDF)としてお届けします。毎週日曜日に1回ずつ更新予定です。

20年前の記事をかわうそ兄弟商會のサイトで公開するに当たり、「かわうそのイメージダウンにつながる」として、社内では強硬な反対意見がありました。それでも掲載に踏み切ったのは、この記事は今日においても読むに値すると考えたからです。おしゃれな藍染め製品を求めていらっしゃった方にはびっくりさせて申し訳ありません。これもかわうそのアイデンティティのひとつです。Aさんの頭は一体どうなっているのか、ご一緒にお考えください。

 

 

 

ご愛用のお客様から

 

先日、藍Padをお求めいただいた方から、写真付きでお便りをいただきましたので、紹介させていただきます。

 

「すばらしい作品を、ありがとうございます。

 一昨日、iPad2(風呂のふた付き)も購入しました。

 作品、すごく使い心地がよいです。
 収納もばっちりです。
 以前使っていた皮ケースごと入れることができます。

藍Padのできるまで

2011年4月23日にオライリーから発売予定の「Make: Technology on Your Time Volume 11」に、かわうそ兄弟商會の記事、「藍Padのできるまで」が掲載されます。MTM06でセンセーショナルなデビューを飾った藍Padとかわうそ兄弟。その誕生の秘密が赤裸々に語られています。もちろん、Make:ですから藍染めの原理や工程も真面目に解説しています。ぜひご一読ください。

4月30日 宮沢賢治を楽しむ会

かわうそ兄弟の叔父さんこと小林敏也さんの画本による幻燈と、元NHKアナウンサーの青木裕子さんの朗読による「宮沢賢治を楽しむ会」が2011年4月30日に軽井沢朗読館で開催されます。かわうそ兄弟のサイトで販売中の「雨ニモマケズ」も上演の予定です。

宮澤賢治と震災

 横浜関内の吉田町画廊での二人展が終了いたしました。不安な時期にもかかわらず、会場に足を運んでいただいたみなさま、どうもありがとうございました。

 今回の二人展で展示した型染めの作品は、そのほとんどが宮澤賢治の詩句を型に彫り、藍で染めたものでした。偶然ですが、賢治は、このたびの地震と津波で甚大な被害を受けた岩手に生まれ、生涯をすごした詩人です。生前に出版した唯一の詩集『春と修羅』には、関東大震災の影響を受けた心象がつづられた詩も収められています。ですから今回は少し、宮澤賢治の詩について書いてみたいと思います。

 自分の詩を「心象スケッチ」とよんだ賢治は、『春と修羅』を編集するにあたって、みずからの「心象スケッチ」を時系列に並べました。すべての詩の末尾に、その詩が作られた年月日が記されているのでそれがわかるのです。1922年の1月から、関東大震災の起きた1923年の9月1日を経て12月まで、約2年間の「心象スケッチ」が、『春と修羅』には収められています。

野口さんの染め仕事<高尾山>/訂正

 節分は季節の分かれめ。暦のうえでは春のはじまり。日もずいぶん延びてとくに夕方に早春の気配を感じる時期ですが、寒さはまだまだ厳しい! うす曇りの2月8日、節分の日に糊置きした生地を染める作業に行ってまいりました。

 野口さんにお仕事のことをあれこれおうかがいするうちに、先の記事の中で数字等、間違って書いていた部分があることがわかりましたので、ここで訂正します。

 「長板は、それぞれ巾40センチ、長さが14メートルぐらい。ちょうど、反物が一反、広げられるサイズです。」と書きましたが、長さは6.5メートルの 間違いでした。ちょうど、反物の半分の長さを一度に広げられるサイズ。まず半分、糊置きをして、それが乾いた後巻きとって、さらに半分を糊置きするのだそ うです。

 「寝かされていると言っても地べたに寝かされているわけではなく、地面から50センチくらいの高さでしょうか。その高さにはたいせつな意味があって、反 物をその上に広げて型を置いていくとき、13メートルある反物ものの端から端までいっぺんに、職人さんがじぶんの目の高さで見渡すことができ、狂いがない かを確認できる高さなのです。」の部分への加筆補正。

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