かわうそ兄弟商會について

 

かわうそは、かつては日本列島全土で広く見られる動物だったそうです。
川辺や田んぼのへりなど、人の暮らしのごく近くに棲んでいて、昔話や伝説に出てくる河童は、かわうそのことだとも言われています。
毛皮目当てに乱獲され、戦後は環境破壊もあいまって急激に減少し、最後に目撃されたのは1977年。今では幻の動物となってしまいました。

かわうそがまだまだ日本中の川に棲んでいた明治時代、日本を訪れた西洋人は、どの土地にもあふれる藍染めの色をJapan Blueと呼びました。きもの、野良着、手ぬぐい、のれんやのぼりなど、藍染めが日本の生活のあらゆる場面をいろどっていたのです。

合成染料の発明や工業化にともない、天然の藍染めは少しずつ減りはじめ、戦後に激減しました。今では日本古来のすくも藍で藍染めを続ける紺屋さんは、まるでかわうそのごとく、絶滅の危機に瀕しています。(2012年8月ニホンカワウソは絶滅したと宣言されました。)

日本人の暮らしかたや自然環境の変化によって、消えつつあるかわうそと日本の伝統的藍染め。Japan Blueにいろどられた日本の風景には、きっとかわうそもあたりまえに生きていたと思います。

かわうそ兄弟商會のデザインのモチーフは、主に文字や数字です。ちょっとだけ本の販売もしています。古典から引用して文章をつくることを「獺祭(だっさい)」と言いますが、これはかわうその習性から出たことばで、かわうそが捕らえた魚をそのまま食べず、まるで神様にお供えをするかのように川岸に並べるため、その様子を獺祭と言うのだそうです。

そんなこんなで、わたしたちにとっては「かわうそ」が、藍染めやら本やら文字やらのシンボルとなっているのです。