炎暑の日。2012.08.22@野口紺屋
陽射しが痛い。
白布がまぶしい。
「下張(したばり)」という作業中。
糊に漬けた反物を干す。
「きょうは30分で乾いちゃうけど、暑すぎてさすがにからだがくたびれる。」
下張は型紙で糊置きをするまえに反物に施す。
同じ「糊」でも、この糊はいわゆるシーツとかぱりっとさせるために糊づけする糊。
こうやって糊づけをし布に歪みがでないようにする。この処理をしておかないと、鏡面で表裏に型を置くとき、両面がぴたりと合わない。
ここ数週間は、訪ねるたび「型置き」の作業はお休みされている。暑すぎて型置きの作業には向かないそうだ。先週は反物を貼る長板を洗ったり、その前の週は長板を置く「馬」という台を土間に埋め替えたりされていた。
かつて型置きの職人さんが何人も働いていた時代も、夏は暑くて仕事にならないから、職人さんはみんなそれぞれどこかに行ってしまう。そして涼しくなると戻ってきた。いなくなった間、何をしていたのかはわからないけど、休んでいたのか、夏向きの仕事をしていたのか。いずれにせよ、そういう雇い方、働き方だったそうです。
「呉入れ」をした半纏用の反物。植物性の染料はたんぱく質と結びつく方が染まりがいいので、木綿のような植物繊維を染めるときは、大豆のたんぱく質を利用して大豆を潰した「呉」というものを水にとき、下塗りをする。
深い濃紺を得るためには呉汁に墨を混ぜる。
墨は油煙(ゆえん)を膠(にかわ)で練って作る。油煙はいわゆる煤(すす)で、膠は牛の皮や骨髄から採るゼラチン。
両方とも業者から買って、野口さんが練って墨にする。書に使う個形の「墨」と粘性が異なるだけで成分は同じ。練ってすぐは粘性があるが時間が経つと乾いた土のようになる。それを木綿布に包み、ダマにならぬよう濾しながら呉汁に振り入れる。
「墨」そのものも染料だ。そういえば、「墨染の衣」とか古文で出てきた。
うすい墨の色は「ねず」の名がある。「ねずみいろ」と呼ぶ色と同じ色なのかもしれないけど、「ねず」の響きのほうが、墨だけれども黒々としていない、ほのかな、水墨画の色調のひとつのような色の印象にふさわしいように感じる。
土間に敷物を敷いて、反物を裁つ作業中。
反物は二反分(二反分でつながった反物ひとまきを「匹」と呼ぶ)で織りあがってくるので、それをふたつに分ける。匹だと30メートル近い長さ。腕の長さで測りながら布を繰り、まんなかで切っていく動作も手早くリズミカルです。
朝顔が水場の小屋の中にはいってきて電気コードにからまってた。植物は感電しないのか?な。